
|
によって、時間をかけて、十分な考証に基いて復元し、これを劇場で上演し、テレビ全国放送で地方文化を発信し、終るとこれを町村に返して、維持保存を要請し、次いで拠点となる神楽苑神楽殿、文楽劇場の創立に設計段階から協力する形をとっている。つまり、鎮守の杜の芸能を、敢て劇場に持ってきたのは、これまでの鎮守の杜で見た村人を県民に置き替え、同時にわが郷土にこのような素晴らしい芸能があったのかと知ることによって、愛郷心の喚起を目標としているのである。
同じ都道府県内に居住していながら、郷土の芸能は意外に知られていないのが実情である。もともと農閑期の娯楽が氏神の境内で行われていたので、強力な集客能力がない限り、都市での祭りとは異って、注目を浴びていなかった芸能が多いのである。
地方分権が声高に叫ばれている現代、郷土の文化に対する国及び地方自治体の目覚めが緊急に必要である。
考慮に入れて欲しいのは、熊本県立劇場が一つの伝承芸能の完全復元に要している費用は、最初の調査、数度の交渉、練習場の借用、衣裳の調達、劇場の借用、大道具代、運送費、弁当代その他一切を含めて、中には世界初の型式による「こころコンサート」の4,000人に及ぶ動員と2,000人の出演者と3年の歳月のため、約7,000万円を要したイベントもあるが、平均しておよそ2,500万円見当である。
即ち、過疎市町村の一つのホールでは困難な面があるが、都道府県立や大都市のホールが、自らプログラム製作のための職員と予算を持つ機能を、国や自治体が作ったり、あるいは費用を支出すれば、これを契機として、文化を通しての経済効果をもたらす地域おこしが可能である事実が、熊本県立劇場の文化振興基金活動によって証明されているのである。
文化会館に美術館博物館のような学芸員を置けというプロの芸術芸能団体からの声が以前から上っているが、プロ団体からの要望としては理解出来るが、実際は容易ではない。
美術館や博物館のように、展示物に対する学問的体系がすでに十分に整っている場では可能であるが、文化会館での催し物は、内容が多岐にわたり、解説可能な演劇、バレエ、オペラ、クラシックやポップスの音楽会は、数が少いのである。
まして過疎の市町村では、中坪委員の報告でもわかるように、自主事業はほとんど行われていない館がかなり存在するのである。
しかし、これらのホールも、同域内の大規模ホールと提携すれば、単に利用されるだけではなく、積極的な地域おこしに参画出来るはずなのである。
もしも政府が都道府県立の大規模ホールに委嘱して、3,000ないし5,000万円を支出し、域内から1村や1町を選出して、芸能や芸術品の活用を計れば、地域おこしは数年後に結実する可能性を持つと思われる。
前ページ 目次へ 次ページ
|

|